最近話題の感染症(カプノサイトファーガ・カニモルサス(Capnocytophaga canimorsus)感染症)
- 感染症
- 2010.09.07
最近、ヒトが犬・猫に咬まれて敗血症になり死亡したという報告があります。過去にも似たような感染症(パスツレラ感染症、猫ひっかき病など)はありましたが死亡するケースは稀でした。この感染症の原因菌はカプノサイトファーガ・カニモルサスという細菌です。非常に難しい名前ですが、犬や猫の口腔内に常在する身近な細菌です。犬での保有率は92%、猫では86%と非常に高い率で口の中に存在します。犬や猫の咬傷感染により感染します。
【では今までなぜ話題にならなかったのでしょう?】
それは、この感染症の特徴として原因菌が一般家庭で多く飼育されている犬・猫の常在菌であること、そして発症が極めて稀であることがあげられます。しかし、発症は稀ですが発症した患者の致死率が非常に高いことが話題になった理由です。
【では、どれくらい国内で発症しているのでしょうか?】
日本で重症化した患者さんの文献報告が14例あります。患者さんの年齢は、40歳から90歳と中高齢者が多く、糖尿病や肝硬変、自己免疫性疾患、慢性病などの基礎疾患をもっていることが多いようです。つまり免疫力低下した状態で感染すると発症しやすい傾向にあります。またすぐに病院に行かずに放置したケースも同様です。国内での動物による咬傷事故の発生数(報告されていない場合も多数あり)に対し、報告されている患者数は非常に少ないことから、本病は極めて稀にしか発症しないと考えられます。またヒトからヒトへの感染報告はありません。
【感染するとどのような症状になるの?】
発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛など。縦症例では敗血症や髄膜炎を起こします。またショック状態や多臓器不全を起こし、死亡することがあります。
【予防対策について】
一般的な動物由来感染症の対応と変わりありません。動物に触れあった場合には手洗いを確実に実行してください。また犬・猫の飼い主が咬まれたり引っ掻かれたりした場合には、そのまま放置せず必ず早急に病院に行ってください。抗菌薬による治療が必要となります。
参考資料:青森県保健衛生課資料より
モダンメディア56巻4号2010より